FBIなど連邦捜査機関が逮捕・拘束したすべての人物からDNAサンプルを採取する米国の制度が間もなく開始されると言う。凶悪犯罪を防ぐのが狙いだが、無実の人のプライバシー侵害につながるとの懸念もある。
司法省が16日明らかにしたところでは、逮捕者のほか、当局が身柄を拘束した外国人からも、起訴・不起訴を問わずDNAサンプルを採取する。
ただし合法的に米国に入国する外国人は、身柄を拘束されない限り採取されることはない。サンプルは頬の内側を綿棒などでこすって採取する。
米国ではシカゴで05年に実施された調査で、もし逮捕者のDNAサンプルを採取していれば、殺人・強姦事件53件は防ぐことができたはずだと結論付けた。
これを受けて法制化の機運が高まり、米国議会は05年と06年に2つの法案を可決、司法省によるDNAサンプル採取の対象拡大を認めた。
しかし、起訴されない場合でもDNAを採取されることに対しては、家族関係や遺伝子疾患などの個人情報が不正利用されるのではないかと懸念する声もある。これについて司法省は、個人情報はプライバシー法で保護され、採取したサンプルが遺伝形質や遺伝疾患の特定に使われることはないと強調した。
米政府の推計によると、FBIなどの連邦捜査機関による逮捕者は年間約14万人。新制度により、DNAデータベースに毎年120万人のサンプルが追加される見通しだ。