ローマ法王ベネディクト16世は17日、ローマのシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)を初めて訪問し、キリスト教、ユダヤ教間の相互理解と協調を呼び掛けた。
シナゴーグ訪問はユダヤ教徒との対話を対話促進を目指す行事の一環で、法王としては24年ぶり。法王庁(バチカン)の記録によると、ベネディクト16世は訪問に際し、ユダヤ教徒とキリスト教徒がともに「貧しい人々や女性、子ども、病人、弱者、恵まれない人々」への思いやりを実践すべきだと強調。両宗教は「精神的遺産」の多くを共有しているとしたうえで、「神のおぼしめしに従って、対話や互いの尊重」などを心がけ、「人類のために力を合わせる」ことが務めであると述べた。
ユダヤ教徒との「対話の日」は毎年恒例の行事とされている。しかし、バチカンが現法王の下で、異教徒に改宗を求める祈りを復活させたことにユダヤ教徒側が反発、昨年の行事をボイコットした。さらに、ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)を黙認したとされる第二次世界大戦中のローマ法王ピオ12世を「聖人」につながる「尊者」としたことで、バチカンとユダヤ教徒の対立は深刻化している。
ベネディクト16世は、当時のカトリック教徒の中にはユダヤ人に手を差し伸べた者もいると述べる一方、反ユダヤ主義に加担した信者らの行為に許しを請い、「傷跡が永遠にいえますように」と祈りをささげた。